制作と入稿

実績50種類以上「黒い化粧箱」制作のポイントと注意点

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黒い箱 サンプル集合

高級感のある化粧箱によく使用される色は「黒」です。
シンプルでありながら、重厚感があり、スタイリッシュなイメージをもたせる黒い化粧箱は様々な製品に使用され、当社においても非常に多くの製造実績があります。一方で、指紋汚れやキズが付きやすいといったトラブルの多い仕様になります。この記事では、黒い化粧箱を制作する上でのポイントと注意点について書いています。

選ばれ続ける黒い化粧箱

「黒い化粧箱」とは、その名の通り「黒」を基調とした化粧箱のことです。
黒い紙を使用した箱や、黒いインキで全体を印刷した箱を指し、ここでは、箱表面の約80%以上が黒色の箱のことを黒い化粧箱と定義します。

なぜ黒い化粧箱が人気なのか

長きにわたり黒い化粧箱は人気があり、様々な製品パッケージの実績があります。その人気の理由のひとつに「高級感」があります。
高坂美紀著『売れる色とパッケージデザインの法則』では、「黒」は「金」とともに、色の中で最も高級感があるように見える色とされており、あらゆる色を鮮やかに美しく見せて引き立たせる色としています。
単色で高級感があるだけでなく、他の色を引き立たせる効果もあるとは、様々なデザインに黒が取り入れられているのも自然に感じますね。

黒い色がもつイメージ

色にはそれぞれに様々なイメージがあります。黒がもつイメージは以下の通りです。
・良いイメージ:落ち着く、高そうなものだと思いやすい、ミステリアスな魅力を感じる
・悪いイメージ:暗い、重い、不安を与える、重苦しい印象
(参考文献:高坂美紀『売れる色とパッケージデザインの法則』ソシム株式会社,2008年)

 

黒い化粧箱を作る方法

黒い化粧箱を作成する際は、〈黒い紙を使用する場合〉と、〈白い紙に黒を全面印刷する場合〉の2通りの方法があります。

黒い紙を使用する場合

まず、黒い紙を使用する際のメリットは、素材自体が黒いので、紙の表裏だけでなく、断面も黒い紙を選択できることです。
断面の層が黒いと細部まで真っ黒な箱を作れます。
黒い紙を使う場合は、黒で印刷する必要がないので、色ムラは最小限に抑えられます。
色ムラが少ないと、箱を組んだ際に隣り合う面との色差が少ないので、より綺麗な黒い箱が作成できます。紙粉も黒いので目立ちにくいのも特徴です。
デメリットとしては、価格が高いということです。白い紙と比較すると、黒い紙は倍近いコストがかかる用紙もあります。

それでも、紙本来の凹凸や、手触り感を残したいというご要望も多く、黒い紙を使って化粧箱をつくることも多いです。
とことん「黒」の質にこだわりたいという場合は、黒い紙を使うのがオススメです。

主な黒い紙一覧

黒い紙は白い紙に比べると種類は限られますが、それでも数え切れない程の種類があり、最適なものを選ぶのは容易ではありません。
そこで実績のある黒い紙の中から人気の高い9種類をセレクションしてご紹介します。

黒い紙の種類 1薄紙 タント、マーメイド、レザック

1.薄紙
【 タント 】 さりげないエンボス模様が生む質感が魅力。
【 マーメイド 】 織り模様のついたファインペーパー。
【 レザック 】 皮革等の風合いが多彩なエンボスペーパー。

黒い紙の種類 2板紙 アートボール、エースボールブラック、ブラックブラック

2.板紙
【 アートボール No2604 ウールボール 】 高級感を演出できる、フェルト風特殊加工を施した紙。
【 エースボールブラック 】 古紙配合率100%。古紙の持つ自然な風合い。
【 ブラックブラック 】 古紙配合率60%。両面黒色の紙。柔らかい黒の色味が特徴。

黒い紙の種類 3ダンボール エフカラー、色ライナー、コート黒ベタきらび

3.ダンボール
【 エフカラー 】 黒に深みを出すため製紙の段階で着色。
【 色ライナー 】 高級感のある段ボール原紙として選ばれる一般的な美粧段ボール素材。
【 コート黒ベタ(きらび)】 表面をコーティングし、深みと高級感を演出。

※写真はイメージです。実際の色味についてはサンプルよりご確認ください。

 

白い紙に黒を全面印刷する場合

黒い紙を使用しない方法として、白い紙に黒を全面印刷する方法があります。メリットは、黒以外の色も印刷できることです。
黒い紙にも印刷することは可能ですが、下地となる黒を反映した色になってしまいますので、印刷の再現性が低いです。
例えば、黒い紙に白を印刷した場合、真っ白ではなく、グレーに近い白になってしまいます。一方で白い紙へ印刷する場合は、黒だけでなく他の色も再現性高く印刷が可能です。
また、白(下地の色)がはっきり見えることも特徴のひとつです。「黒ベタ印刷に白抜きのロゴ」のようなデザインはよくありますが、その際に白にしたロゴやデザインがはっきりと映えて見えます。

デメリットとしては、適切な表面処理を施さないと、指紋やキズが目立ちやすいという点が挙げられます。表面処理についての詳細は後述します。

黒1色印刷とリッチブラックの印刷

上記の印刷には主に2通りの印刷方法があります。
「黒1色印刷(スミベタ印刷)」または、「リッチブラック(CMYK)」で印刷する方法です。

黒の印刷 スミ1色刷りとリッチブラック CMYK4色刷り

それぞれの印刷のメリット・デメリットについて説明します。

黒1色印刷(スミベタ印刷)

黒いインキを1色だけ使用して印刷する方法です。「スミベタ」とも言われます。
特徴として、全体的にすっきりとした綺麗な印象の黒に仕上がります。
1色だけの印刷のため、版ずれが起きる心配がなく、ムラ無くきれいに印刷することができます。
また、版などにかかるコストを抑えることが可能です。
デメリットとして、インキがうまく乗らず白い点のようになってしまう、「ピンホール」という印刷トラブルが起きる可能性があります。細かい紙粉などが版に取られて、部分的にインキが乗らなくなってしまう現象ですが、黒などの色の濃い印刷物だと目立ちやすくなります。
CMYKなど複数の版で印刷する場合は版を重ねて刷る分、ピンホールが発生しても目立ちにくくなります。
スミベタ印刷でもそれを防ぐ方法として、版を2枚使用して、黒を重ねて印刷することもあります。

リッチブラックの印刷

リッチブラックとは、CMYKの4色をかけ合わせて表現する黒のことです。
スミ1色刷りでの黒よりも、深みのある黒を表現することができます。当社では、リッチブラックは「C30% M30% Y30% K100%」のかけ合わせを推奨しております。(これ以上濃度を上げると印刷トラブルが起きやすくなるため注意が必要です。)
デメリットは、CMYKのかけ合わせのため、色ムラが出やすいこと。また、版を4版使用するのでコストが高くなります。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。リッチブラックで印刷した化粧箱

紙を選ぶ際のポイント

黒を全面に印刷する際に大事になってくるのが〈紙の平滑度〉です。
平滑度の高い紙ほど、平らでインキのノリが良くなり、印刷物がムラのない綺麗な仕上がりになります。

以下に一般的によく使用される紙を2つ紹介します。

1.コート白ボール(表面:白/中層:グレー/裏面:グレー)
最も使用されている紙。
製紙メーカーによって白色の度合いが異なります。
〈材質詳細はこちら:『コート白ボール』 〉

2.高級白板紙(表面:白/中層:白/裏面:白)
コート白ボールより白色度・平滑度の高い紙。
高級化粧品や、両面印刷が必要な際に使用されています。
〈材質詳細はこちら:『高級白板紙』

おすすめしない紙

ムラのない仕上がりにしたい場合は、前項で説明した「マーメイド」や「レザック」のような質感を持つ紙はインキがノリづらく、色ムラが出やすいため不向きです。
(稀なケースではありますが、あえて平滑度の低い紙に印刷し、その紙の風合いを活かすこともあります。)

 

黒い化粧箱に合う加工~表面処理~

黒い化粧箱の魅力を引き立たせる方法のひとつが、表面処理を工夫することです。
黒を基調としたデザインは、シンプルな色使いだからこそ、質感や手触り感にこだわると、より高級感が増します。当社の製造実績から、黒い化粧箱(黒を印刷した箱)への様々な表面処理を一覧にまとめました。

光沢感かマット感か

 表面処理の方向性は大きく分けて、「光沢感」を出すか、それとも「マット感」を出すか、という2つに分けられます。
それぞれ、光沢感の場合は「OPニス」「プレスコート」「クリアPP」などがあり、マット感の場合は「マットニス」「マットビニール」「マットPP」などがあります。
商品やデザインのコンセプトによって使い分けましょう。

黒い化粧箱に合う表面処理 1光沢系 OPニス、プレスコート比較 
黒い化粧箱に合う表面処理 2マット系-1 マットニス、マットビニール、マットPP比較
黒い化粧箱に合う表面処理 2マット系-2 指紋・キズ対策 耐キズマットPP

指紋やキズには注意が必要

気をつけなければいけない点もあります。黒い化粧箱は指紋やキズが非常に目立ちやすいという点です。

黒い車に付着している花粉や汚れが目立ちやすいのと同じで、良くも悪くも、黒は黒以外の色(汚れなど)を際立たせてしまいます。
特に、「マットニス」、「マットビニール」、「マットPP」などのマットの表面処理の場合は、少しでも擦れたり、手の油がつくと、汚れとなってしまいます。

キズや汚れ対策には「耐キズマットPP」

解決方法のひとつに、「耐キズマットPP」という表面処理があります。
マットでありながら、擦れやキズに強いPPフィルムで、印刷面にそれを熱圧着させる加工になります。
通常のマットPPとの比較実験もおこないましたので、詳しくはブログ『化粧箱の表面処理とキズがつきにくい「耐傷マットPP」』をご覧ください。

表面処理の提案

以前、とあるお客様から「黒い化粧箱を他の業者にお願いして作っていたが、キズや汚れがとにかく酷く、相談に乗ってほしい」と相談を受けたことがありました。
その化粧箱は黒を基調としたデザインに、マットニスを使用していたものでした。マットニスだとどうしてもキズが目立ってしまうことをお伝えした上で、「耐キズマットPP」をご提案し、採用いただきました。

 

黒い化粧箱に合う加工~箔押し~

黒い化粧箱にさらに高級感をプラスするひとつの方法として「箔押し」があります。
箔押しとは、金・銀などの箔に熱を加えて紙に接着させる加工方法のことで、別名「ホットスタンプ」ともいわれます。

金や銀の箔押し

黒い化粧箱に合う加工 箔押し 金箔と銀箔

冒頭で「黒」と「金」は色の中でもっとも高級感がある色とお伝えしました。黒い化粧箱に金の箔押しは、高級感を訴求する上で最高の組み合わせと言えるでしょう。
当社の制作実績の中でも、黒い化粧箱に金や銀の箔押し加工をした例は多く、どの箱も高級感があります。

箔の錆には注意が必要

黒い化粧箱と箔押しの仕様にも注意点があります。
黒い用紙の上に箔押しをすると、箔の金属部分が黒い用紙に含まれるカーボン(炭素)と反応して、箔が錆びてしまうことがあります。
この現象は紙と箔の相性や、保管環境など様々な条件が重なる場合に発生しますが、決定的な原因については明らかになっておらず、印刷で黒を再現する方法やPPの表面処理をした後に箔押しをするなどの対策が必要になります。

電子レンジで加熱する可能性のある箱の場合

電子レンジで温める必要のある食品の化粧箱に通常の金箔や銀箔を使うと、
電子レンジ内でスパークする可能性があります。加熱する食品の容器には「絶縁箔」がおすすめです。
「絶縁箔」は金属探知器や検針器にかけても反応せず、携帯電話などの通信機器にも安心です。
詳細:『電子レンジ対応の箱・容器や食品用ラベルに使える!電気を通さない「絶縁箔」

 

黒い化粧箱の制作事例

ここからは、黒い化粧箱の製造実績をご紹介します。

黒1色印刷+OPニス 「新潟米化粧箱」

合紙 額縁付きN式化粧箱 
 新潟米化粧箱

地元新潟のお米セット箱です。3合のお米が3袋(計約1.5kg)入る化粧箱です。
印刷は黒1色しか使用していませんが、白いロゴや文字が映えるスタイリッシュな化粧箱になりました。

詳細:お客様事例「ギフト向け+重い製品にも適した仕様〜お米用額縁付きN式化粧箱」

サイズ:260×117×H65mm
形状:組立式N式箱(三方額)
材質:片面段ボール+コートボール310g合紙
印刷:1色(黒)
表面処理:OPニス

 

黒1色ベタ印刷+マットPP 「工具用化粧箱」

化粧箱事例 黒い箱 箔押しあり

自動車整備に使用するオリジナル工具の化粧箱です。ポイントは「黒箔」を使用したこと。
黒い化粧箱は、金や銀の箔押しとの相性が良いのはもちろんですが、黒い箔との相性も良いです。マットPPの表面処理をしたことで、黒箔がより際立つデザインとなりました。

詳細:お客様事例「シンプルなデザインだからこそ、こだわりの仕様。合紙 工具用化粧箱」

サイズ:160×50×H460mm
形状:キャラメル箱
材質:片面段ボール+コートボール310g合紙
印刷:1色(黒)
表面処理:マットPP
加工:箔押し(黒)

 

Eフルート/両面黒 「お酒720ml用カートン」
黒い箱 お酒720ml用カートン Eフルート両面黒 黒い箱 お酒720ml用カートン Eフルート両面黒 ふたを開けた様子

Eフルートの段ボールでお酒用の化粧箱を作成しました。両面に色ライナー黒を使用しており、箱を開けても黒いところがポイントです。
印刷はありませんが、無地でも高級感があるのが黒い化粧箱の特徴です。箔押しなどを追加するとさらに高級感が増すと思います。

サイズ:90×90×H312mm
形状:底ワンタッチ式
材質:Eフルート/色ライナー黒/色ライナー黒
印刷:なし

 

黒1色ベタ印刷+プレスコート 「窓あき小箱」

黒い箱 黒ベタ印刷プレスコート 窓あき小箱

左は箱の正面、右がふたを開けた様子。両面印刷で、外側がプレスコート、内側は表面加工なし


両面が黒い紙を使用する方法以外にも、紙の表裏に黒を印刷することで「両面が黒い化粧箱」を作成できます。
もともとは両面とも白い紙ですが、写真のように、ここまで真っ黒になります。表にプレスコートの表面処理をしており、光沢感が出ています。

サイズ:51×61×H51mm
形状:キャラメル箱
材質:特板カードB(表白/裏白)310g
印刷:表裏1色(黒)
表面処理:表/プレスコート 裏/なし加工

 

黒い化粧箱ならおまかせください

今回は、黒い化粧箱を制作する上でのポイントと注意点について、製造事例を交えながら解説しました。
一口に黒い化粧箱と言っても、製造する方法が多岐にわたることがわかります。
黒い化粧箱は化粧箱屋ドットコムにおまかせください。ご要望に応じて、豊富な実績から最適な仕様をご提案いたします。

 

 

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〈筆者〉 営業部 たかの

県外の大学を卒業後、地元である新潟にUターン。流通・小売業を経て2014年(株)コマガタ入社。
印刷、加工、設計など社内研修の後、営業課に配属。配属当初より「化粧箱屋ドットコム」の問合せ窓口を担当。
化粧箱などのパッケージ営業経験8年。年間見積り件数は1,500件超。 
2016年JAGAT「プリンティングコーディネータ養成講座」受講。
食品や化粧品などのパッケージを多数担当。高級感のある印刷・加工、ラフ系特殊紙を扱った提案を得意とする。
「お客様の視点」を意識し、『悩みを解決できる営業マン』を目指し日々活動中。
好きな材質はエースボール。新潟市出身。1989年生まれのA型。

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