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「過剰包装」と「過大包装」の違いとは?

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過剰包装と過大包装の違いとは? タイトル

「過剰包装」「過大包装」という言葉を聞いたことがありますでしょうか?

どちらも化粧箱やパッケージ、プラスチック製の袋など様々な「包装」に関係する言葉です。「過剰」か「過大」か、たった1文字違うだけですが、何か違いがあるのでしょうか?インターネットを中心に、その基準や事例なども調べてみました。

過剰包装とは

「過剰包装」とは、必要以上に多くの包装資材を使って製品を包装することです。

「過剰包装」の例として

・野菜や果物を1つずつラップで包む。トレイに入れて更にラップをかけたり、フィルムで巻く。

・お煎餅やクッキーなどのお菓子で、プラスチック製の個包装で11つ包装し、それをトレイに並べ、袋に入れる。

・ギフトやお土産などで、袋や箱など様々な包材を使って包装する。(「多重包装」とも言われます。)

などが挙げられます。この他にも、レジ袋や、贈答品を包む「のし紙」や「掛け紙」も、過剰包装のひとつと感じる方もいらっしゃるかもしれません。

 

過大包装とは

次に、「過大包装」を簡単にまとめます。

・実質よりも中身を大きく、多く入っているように見せかけ、消費者の誤解を招いてしまうおそれがある包装。

・「過大包装」は景品表示法の「有利誤認の不当表示の例」として禁止されている。(引用1,2)

・必要以上の仕様(大きさ、多重包装)で製造するため、資源を多く費やしてしまうことが問題となっている。

・下記図解の「あげぞこ」などは、製品保護のために必要な手段でもあり、過度にならないよう注意が必要。自治体や業界団体でガイドラインや条例を設けて規制している(後述の引用3、4。6章にて適正包装の基準を説明)。

「過大包装」の具体例を図解でご覧ください。

過大包装の例 図解

コラム「紙箱でSDGsに貢献できること」より再掲
参考:紙製容器包装リサイクル推進協議会 「紙製容器包装の環境配慮設計の考え方 環境配慮設計の運用 1 過大包装への配慮」 
図解は同「参考資料2 内容量を実質以上に見せる包装」を参照し作成。

上記図解のように、「過大包装」は紙製の化粧箱やパッケージ製造により関連しており、ひょっとすると一般の方は「過剰包装」よりも耳慣れない言葉かもしれません。「過大包装」の反対である「適正な包装(適正包装)」となるように、設計や包装経費の基準も定められています。(こちらは6章にて後述します)


引用1:消費者庁『事例でわかる景品表示法 不当景品類及び不当表示防止法ガイドブック』    p3 不当表示の禁止より
商品・サービスの品質や価格について実際よりも著しく優良又は有利と見せかける表示が行われると、消費者の適切な商品・サービスの選択が妨げられてしまいます。このため、景品表示法では、一般消費者に商品・サービスの品質や価格について、実際のもの等より著しく優良又は有利であると誤認される表示(不当表示)を禁止しています。

引用2:内閣府資料3 景品表示法について 平成21年8月3日 消費者庁・消費者委員会設立準備室 表示対策担当』  
P4 不当表示の例 有利誤認 過大包装(実際よりも量目が多いと誤認)”

 

「過剰包装」と「過大包装」は同じ意味の言葉として使われている場合もある

 以上のように「過剰包装」と「過大包装」は、様々なケースがあり互いに関連しているためか、同じ意味の言葉として使われている場合もあるようです。実際に、通販で小さい製品を注文した際、大きすぎるダンボール箱で梱包されて届いたという経験はありませんか?(SNSなどでその様子を撮影した画像を見かけたという方もいらっしゃるかもしれません。)これは、「過剰なサイズの包装」で、「大きすぎる(過大)包装」でもあります。包装は製品を保護するために必要不可欠なものですが、「過剰包装」「過大包装」はどちらの場合でも多くの資源を消費し、廃棄物の増加やその処理でも環境へ負荷をかけることが問題となります。その視点から、ここから先は「過剰包装」と「過大包装」の定義を特に分けずに、それらが起きてしまう背景と、その逆のどんな包装が望ましいかについて述べてみたいと思います。

 

「過剰包装」「過大包装」が起こる理由

 なぜ、「過剰包装」「過大包装」が起こってしまうのでしょうか?理由はいくつか挙げられます。

安全性と品質の重視

 日本人はきれい好きで、包装にちょっとした傷が入っているだけでも返品や苦情につながってしまう場合があり、それを避けるために過度に包装してしまう。

贈答文化

 包装紙やのし紙、掛け紙などで包むことにより、贈る相手に対する敬意や感謝の気持ちを表現する。(フォーマルな贈り物では、のし紙がないとマナー違反とされることも。)

市場の競争激化

 他の製品と差をつけるため、必要以上に豪華な包装にする。

 先述の図解にあるような極端な「過大包装」は、既に景品表示法で禁止されて来たためか私自身これまで実際に手にすることはありませんでした。今回の調査で、過去にあげ底や額縁などの過大包装が問題となる背景があったとわかりました(引用3)。他にも同様の理由で、お隣の中国でも近年ギフト商品や通販での「過剰包装」が問題となり、制限する基準が定められたそうです(参考記事1)。

引用3『全国観光土産品公正取引協議会とは』「公正競争規約 観光土産品の公正競争規約の成立と改正 」 より

観光土産業界の自主ルールである公正競争規約ができたのは昭和41年にさかのぼりますが、その当時の観光土産品の最大の問題点は、あげ底、がく縁などといった過大包装でした。規約ができたのに伴い、相次いで各都道府県に地方あるいは地区協議会が設立され、それぞれの地域において試買検査、認定審査、店頭指導を柱に規約にそった事業を実施しました。また、企業も積極的 に規約の遵守に努力し、昭和50年代、60年代と年代が進むにつれて過大包装の面はもとより、観光土産 品の表示は大きく改善されました。

参考記事1:AFP BB news『中国で「過剰包装禁止令」 ハデ好み文化を変えられるか』2021107

 

「過剰包装」「過大包装」にも止むを得ない事情がある?

 「過大包装」の項目で取り上げた「実質よりも中身を大きく・多く入っているように見せかける」包装は、シンプルに言って消費者に対して不誠実であり避けることが重要と考えます。ですが、様々な要因から一概に悪いばかりではないケースもあります。

 例えば前述のお菓子のパッケージでは、トレイを使用することで壊れやすいお菓子を綺麗な形で消費者に届けることができます。更に、個包装化すれば、製品を美味しく食べられる期限を延ばしたり、品質を保ったまま最後まで消費者の好きなペースで食べられること、他の人と分け合って楽しめるなどのメリットがあります。

 また、通販での「過大/過剰包装」の例として挙げた「大きすぎる梱包箱」の例では、小さい製品を個別の消費者に発送する際、製品に合った小さいサイズの箱では強度不足で製品が破損する恐れがあり、ある程度の大きさが必要となります。他に、多種多様な製品を取り扱う企業では、ひとつひとつの製品にジャストなサイズで箱などの梱包資材を作るとなると、輸送コストや製造コストが上がってしまいます。そのため、平均的なサイズをいくつか割り出して包装を兼用することは現実的な手段と言えるかもしれません。

 しかしその中でも近年の環境意識の高まりにより、持続可能な包装の利用や最適な包装サイズの選択など、負荷削減に向けた取り組みが行われています。(参考記事2、3)

参考記事2:J CATニュース 『高校生「過剰包装をなくして!」署名ブルボン回答 企業姿勢に「矜持を感じる」と高評価』20200731日 

参考記事3:Amazon Amazonによる梱包最適化の取り組み』2023.6.23 

 

「過剰包装」「過大包装」から「適正包装」へ

 「過剰包装」「過大包装」について取り上げてきました。環境への負荷を減らすため、自治体の消費者生活条例で「過大包装」または「適正包装」の基準が定められています。

「適正包装の原則
①空間容積が過大となる包装又は過剰な包装をしないこと
②包装経費が内容品に相応適切にする」(引用4)

具体的に、

空間容積率※(包装容積から内容品体積を控除した容積)が包装容積の20%以下。箱と商品のスキマが20%以下の設計が適正望ましいとされています。

包装経費率が商品の販売価格の15%以下。包装にかかる経費が販売価格の15%以下が適正といわれています。

商品の詰合せや抱き合わせでも同様の配慮が必要とされています。また、上記2章図解のような「内容量を実質以上に見せかける包装(過大包装)」は行わないよう注意が必要です。

引用4:紙製容器包装リサイクル推進協議会 「紙製容器包装の環境配慮設計の考え方」H27.11.24改訂「過大包装への配慮」

※各自治体や各種業界団体で基準が定められている。
参考記事3:京都市【平成20年度】第93回京都市消費生活審議会資料8 包装基準に関する要綱等の見直しについて 参考資料7(ファイル名:93singikai_08-7shiryo8.pdf)では、複数の自治体の基準がまとめられており、神戸、大阪では空閑容積率は15%以下。

調査を終えて

 「適正包装」は、製品の破損や品質保持のための機能を維持しつつ、資材の利用や輸送と包装処分時の環境負荷を減らすため、各企業で様々な取り組みが続けられています。SDGs採択により意識が高まったためか、日々の生活や業務の中でも食品や化粧品などの紙製パッケージでFSCラベル(環境に配慮した紙を使用している)を頻繁に見かけるようになったと感じています。さらに、紙マークやプラマークを初めとしたリサイクルを促す表示の位置も変わってきているようです。以前はパッケージ裏面の隅に配置されることが多かった紙マークが、最近買ったお菓子の箱では正面手前側の開封部の隣にあり、時代の変化に驚かされました。
 調査を終え、「適正包装」は企業側の選択に依存する部分がほとんどかもしれませんが、一消費者としても包装の分別、簡易包装やエコな新素材を採用した製品を選ぶなどことが重要であると再認識できました。その他の参考記事として包装事例や資料、SDGs関連の記事をご紹介して締めくくりたいと思います。お付き合いいただきありがとうございました。

その他の参考記事

経産省リサイクル推進課 「容器包装の環境配慮設計に関する事例集 包装の環境配慮に関する JIS を活用した容器包装のリデュース取組事例」H28(2016).2月

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今さら聞けないEC知識「梱包資材を中心にサステナブルへの取り組み始まる 4つの事例を紹介」EC研究所[著] 更新日: 2023/03/31 公開日: 2021/11/06

◎関連項目

包装とは?梱包との違いは?「個装」「内装」「外装」と適正包装7原則

『紙箱』とは?「紙器」「カートン」「段ボール箱」の違いや素材について 

 

 

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