iPhoneの箱(Vカットの箱)と普通の貼箱の違い
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「iPhoneの箱のような化粧箱を作れますか?」
お客様から「iPhoneの箱のような箱を作れますか?」とお問合せいただくことがあります。iPhoneの箱は、後述する『Vカット加工』、『マットPP加工』、『エンボス加工』などを用いて作られています。オーダーメイド化粧箱製作のプロの目から見ても、「iPhoneの箱は素晴らしい品質」のため、こうしたお問合せをいただくのだと思いますが、残念ながら、予算の都合であきらめてしまうことがほとんどです。そうした場合、「iPhoneの箱」と同じ品質ではなく、「普通の貼箱」をおすすめしています。「iPhoneの箱」も「貼箱」と呼ばれる種類の箱のため、十分高級感のある箱を作ることが可能です。
結論
「iPhoneの箱」と全く同じ品質の箱を作ることは、予算の都合(最低30万円以上)であきらめることがほとんどです。
ただし、「普通の貼箱」でしたら、最低100個程度から製造することが可能で、予算的にも1個あたり数十円から数百円で製造することが可能です。※箱のサイズ、数量、印刷仕様、用紙によって箱の価格は変わりますのでご注意ください。
貼箱とは?
貼箱とは、和菓子やブランド品などの箱でよく利用される箱で、iPhoneの箱のように、フタ箱と身箱からなるC式の形状が多く見られます。構造的には、中芯(なかしん)と呼ばれる厚紙を箱型に成形し、タントなどのファンシーペーパーを貼って美粧性を高めます。この中芯に貼る紙を表紙(おもてがみ)、貼り紙(はりがみ)などと呼んでいますが、印刷した和紙やレザックなど様々な紙を貼ることも可能で、デザインの選択肢が広いことも特徴です。
ファンシーペーパーとは
洋紙仕上げの特殊紙の一種です。豊富な色・風合いを持つ装飾性の高い紙の総称です。色数、紙質、紙厚、さまざまなエンボス加工などの組み合わせが無数にあるため、オリジナリティのある化粧箱を作るときによく使われます。当社でよく使うファンシーペーパーとしては、「タント」「レザック」「新だん紙」「ハイチェック」などがあります。
iPhoneの箱 4つの特徴
iPhoneの箱は、『Vカット加工』、『マットPP加工』、『エンボス加工』などが特徴です。詳しく紹介します。
特徴その1: Vカット加工で、iPhoneの絵柄をセンター合わせで配置
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iPhoneの箱は『Vカット加工』で、箱の直角を出し、シャープさを演出。ここで特筆したい部分は、箱の各面の絵柄がセンターにピッタリ合っていること。天面のiPhoneの絵柄が分かりやすいのですが、余白部分が天地左右9ミリでそろっています。仮に0.5ミリでもズレてしまったら、余白の差に気づいてしまします。Vカットした中芯に、印刷した紙を寸分の狂いなく貼り合わせるのは、大変難しく、技術の高さがうかがえます。
特徴その2:マットPP加工で接着ムラ無し
iPhoneの箱は、表紙(貼り紙)に『マットPP加工』を使用していることも特徴的です。貼箱の表紙(貼り紙)は、反発が強い紙だと接着不良が起こるため、できるだけ薄い紙(70kg程度)を使用します。マットPPをラミネートすることは、反発が強くなると同時に、ボンドが浸透しにくくなるハンデを負うことになるため、加工難易度が上がります。専用の機械を使用しているようですが、ボンドもPP対応のものを使用していると思われます。
特徴その3: エンボス加工をiPhoneの絵柄にピッタリ合わせている
『エンボス加工』については、iPhoneの絵柄に寸分の狂いなく合わせています。絵柄から0.1~0.2ミリ程度余裕を持たせ、エンボスがズレても分かりにくくしていますが、大変シビアなセッティングです。
特徴その4: のりしろが浮き出ないような設計
通常の貼箱は、箱の側面にのりしろが浮き出るのですが、iPhoneの箱は、側面がフラットです。これは、のりしろを伸ばして、浮き出ないように設計されているからです。
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通常の貼箱(左)とiPhoneの箱(右)の側面の違い。貼箱は側面に表紙を巻き込みながら貼り合わせる製造工程で、のりしろが重なった部分にうっすらと段差が出てしまいます。iPhoneの箱は、段差が出ないようにのりしろの長さを通常よりも伸ばしており、側面はフラットな美しい仕上がりとなっています。角やエッジのシャープさの違いもご覧ください。
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通常の貼箱(左)とiPhoneの箱(右)の箱の内側。箱の内側でも違いが見て取れます。左の通常の貼箱、茶色の表紙は側面の高さの半分までの貼り込みになっていますが、右のiPhoneの箱では天面までピシッと貼り合わせてあります。
以上のようにiPhoneの箱は、難易度が高い加工の組み合わせで作られており、大変独創的な箱といえるでしょう。
Vカットで作成した貼箱とは?
iPhoneの箱は、上記で述べてきたように、品質レベルがかなり高いため、同じ仕様で作ることは、予算的に現実的ではありません。
そこでポイントを絞って『Vカット加工』で直角をしっかり出した箱を作る場合についてご説明します。Vカットの箱は、普通の貼箱より価格が高く、ロットも1,000個以上は必要です。総額で30万円以上はかかりますので、予算をオーバーする方は、後述の「普通の貼箱」をおすすめいたします。
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『Vカット加工』とは、中芯の罫線の溝をV字型にカットし、罫線を折った時に箱のエッジが直角になる加工です。iPhoneの箱が特徴的ですが、弁当やおせちなどで使われる折り箱などにも使用されています。Vカットのコストが高くなる理由は、製造装置のセッティングに時間がかかることと、1枚の中芯を2方向からVカットするため、工程が増えることが理由です。普通の貼箱であれば、型抜きなどで工程が少なくて済みますが、Vカットは中芯を薄皮1枚残す加工で、さらに直角を出す角度調整が必要で、難易度も高いのです。Vカットは、商品単価が数万円で販売数量も多い商品に適した箱といえるでしょう。
Vカット加工の箱と普通の貼箱の違い
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Vカット加工の箱(写真左)と通常の貼箱(写真右)のエッジとのりしろの比較。角やエッジに仕上がりの違いが出ますが、通常の貼箱も上品な仕上がりで高級感があります。
「iPhoneの箱と似た雰囲気の箱」おすすめの仕様3パターン
iPhoneの箱の特徴は、上記でご説明した通りですが、「似たような雰囲気の箱で良い」というご要望もあろうかと思います。その場合におすすめする仕様3パターンを次にご紹介します。
その1:貼箱で製造する場合
・表紙(貼り紙)は、マットコート紙を使用
・箱の内側を裏打ちする(マットコート紙を裏側にも貼る)
・印刷する場合は、抜型を使用し、切り口をシャープに
◎紙の両面ともマット感が出ます。抜型を使うことで、切り口がシャープになり、デザインも図面に合わせてきちんと配置されます。
その2:抜き箱で製造する場合
・形状は、C式(身ふた式)
・材質は、カードB以上の高級白板紙を選び、『マットPP加工』をする
◎折りたたんで箱にするため、iPhoneの箱と比べるとシャープさに欠けます。ただし、所要工程が少ないため、安く製造することが可能です。
その3:一般的なVカットの箱で対応
今まで述べてきたように、iPhoneの箱は加工難易度が高く、コスト的に現実的ではありません。ただし、「一般的なVカットの箱」であれば、コストを多少抑えることが可能です。「iPhoneの箱」と「一般的なVカットの箱」の違いは以下の通りです。
・マットPPやエンボス加工などを使用しない
・のりしろも通常の設計にて対応
◎iPhoneの箱の特徴的な加工である『マットPP加工』、『エンボス加工』、「のりしろを見せない」ことを除くと、「一般的なVカットの箱」になります。Vカット自体が難易度の高い加工のため、割高にはなってしまいますが、通常の貼箱ではご満足いただけない方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
「iPhoneの箱のような箱」はコストがかかりすぎて、数万円以上の高額商品向けの化粧箱と言えます。全く同じ加工をしようとすると、割高になってしまいますので、必要な加工に優先順位をつけて、省ける加工はできるだけ省いてコストを下げた方が現実的です。Vカットの箱は製造数に関係なく、最低でも30万円程度はかかりますが、高額商品を入れる箱の一つして知っておいてもよいでしょう。
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