制作と入稿

印刷方法や機材で異なる仕上がり。色見本の役割とは? 

制作と入稿

化粧箱・パッケージ印刷_印刷方法で異なる仕上り。色見本の役割とは?

オフセット印刷、オンデマンド印刷、プリンタ出力、意外と混同されている?

オフセット印刷を前提とした色見本のない案件で、インクジェットプリンタとレーザープリンタの出力紙を両方送ったところ、『インクジェットのにじんだ質感がいい』との回答をいただき、困ってしまったことがあります。 
 
最終的にオフセット印刷で製造するため色味については調整可能ですが、実際の用紙に左右される「質感」となると少し話が違ってきます。ご希望の仕上がりに近づけるデータ調整は行いましたが、お客様に「仕上がりが異なる理由」「印刷とプリンタ出力の違い」など、ご理解いただくのに苦労しました。 
 
使用する印刷機材によって仕上がりは異なります。よく耳にする、オフセット印刷とオンデマンド印刷や、インクジェットプリンタとレーザープリンタ、それぞれの違いと特徴を解説します。 

オフセット印刷とオンデマンド印刷の違い 

オフセット印刷とオンデマンド印刷の一番の違いは、印刷する前に刷版を出力するかどうかです。オフセット印刷では印刷内容を焼き付けた刷版出力を必要としますが、オンデマンド印刷ではデータから直接出力します。

データから直接印刷する点ではオンデマンド印刷は手軽で便利に感じますが、製造ロットが大きい場合にはオフセット印刷の方がコストが下がるなど、それぞれに異なる利点があります。 

オフセット印刷

オフセット印刷機 オフセット印刷機 インキつぼ

◎着色材料が油性のインキ 
◎刷版を使用するため製版作業が必要 
◎大量生産向き(小ロットの場合は高コスト) 
◎色見本となるのは、製造実績があるか『本機校正』を行った場合 
 
『印刷』といった場合、オフセット印刷を指すことがほとんどです。

RIP(※以下に説明)処理された文字や画像を焼きつけた刷版を使用します。印刷物を拡大すると小さな点の粗密や重なりで色合いやグラデーションが表現されています。

印刷できる用紙の幅が広く、用紙によって印刷の仕上がりや質感に違いがあります。 
 
コート紙やマットコート紙などの印刷適正を高めた用紙 →発色や階調の再現度が高く、比較的くっきりした仕上がり。
上質紙やファンシーペーパー(質感のある用紙) →発色や階調の再現度は低くなるが、質感のある柔らかな印象の仕上がり。 

※RIP=Raster Image Processor/ラスターイメージプロセッサ/文字や画像をプリンタで印刷可能な形式に変換するためのソフトウェアや装置のこと。印刷会社では刷版出力の際、専用のソフトが入ったサーバでアミ点に変換する処理を指しています。

印刷方式

 

オンデマンド印刷

『必要なときに必要なだけできる印刷』=プリントオンデマンド (print on demand / 頭文字をとって POD とも呼ぶ)のこと。主な特徴は以下のとおりです。

◎決まった印刷方式を指すわけではない
◎データから直接印刷を行う
◎比較的小ロット向きだがバリアブル印刷が可能
◎簡易校正の出力機として使用する場合もある

特定の印刷方式はありませんが、レーザー式とインクジェット式が一般的。方式については、オフィス用や家庭用プリンタと同じですが、より高性能で刷り上がりも高品質な専用機を使用します。

印刷は、データを直接出力するため刷版を必要とせず、印刷内容に同一部分と可変部分を存在させる「バリアブル印刷(※以下で説明)」を容易に行うことができます。ただし、オフセット印刷に比べて通せる用紙サイズは小さめで、比較的小ロット向きです。

当社では、生産機として以外に、簡易校正の出力やデザイン制作時のプリンタとしても使用しています。 

※バリアブル印刷(可変印刷)/データに基づいて内容に可変部分を持たせる印刷。DMの宛名印刷や、チケットの通し番号などがそれにあたります。

【レーザー式】

レーザー式は着色材料が粉状(トナー)で、データから直接印刷できる、小ロット向きの方式です。

オフィス用プリンタでも用いられている、トナーと呼ばれる粉状の着色材料を使用した方式。用紙表面に着色材料の皮膜ができるため、にじみのないクッキリとした仕上がりです。 オフセット印刷と違い、特殊紙や厚すぎる用紙には不向きです。(当社使用の機種は350g/㎡程度まで)

オフセット印刷と同じCMYKの4色で色を再現。特色は近似値で再現するためカバー率は高くありません。RGBの色空間により近い再現を行う、高彩度トナーを使用する機種もあります。

「オンデマンド印刷」と言う場合は、レーザー式のタイプが一般的。専用プリンタ自体が「POD」と呼れることもあります。

 

【インクジェット式】

インクジェット式は着色材料が液体(インク)で、データから直接印刷できる 
極小ロット向きの方式です。

業務用の大判タイプから家庭用まで幅広く用いられている方式。着色材料が液体のためレーザー式に比べて、ややにじみを感じる柔らかな仕上がりです。

オフセット印刷と同じ CMYKに「ライトマゼンタ」「ライトシアン」などを加えた4色以上のインクを使用するため、ある程度の特色を再現できます。専用資材であれば、布などにも印刷が可能。小部数のポスターやパネル、のぼり旗など屋外サインの生産機として使用されています。

用途としてはPODと言えますが、「大判プリント」「大判インクジェット」などの呼び方が一般的です。

 

プリンタが変わると出力結果が異なるのはなぜ? 

データ入稿後に当社の出力紙(簡易校正)をお届けした際、時々起こるのが『当社の出力紙と手元の印刷物の色味が違っている』という問題です。理由は様々ですが、出力機材やデータ作成のポイントを把握すれば納得できるでしょう。なぜ、色味が変わってしまうのか、原因を以下にまとめました。

色味の変化を起こす主な原因

主な原因は、プリンタ特性、作業環境、データの設定です。

◎プリンタごとの特性による場合

印刷方式や着色材料、使用できる用紙の違いなどから同じ条件のデータでも仕上がりが異なります。特に家庭用のプリンタやオフィス向けプリンタでは、印刷向けの色味を再現することが目的ではないため違いが出やすいでしょう。お手持ちのプリンタの色味をご希望の場合は、出力紙をお送りいただければ、近づけるための調整も可能です。

◎モニターやプリンタの設定など作業環境による場合

すべてのモニターやプリンタが同じ設定、同じ条件ではないため、環境が変わった際に出力結果が異なる場合があります。 
『普段作業しているモニターやプリンタの設定が制作物に適しているか?』『モニターに表示された色味とプリンタ出力に大きな差はないか?』などを確認することで 、どの出力結果がより正しいのかを判断する材料になります。

◎カラープロファイルなどデータ設定による場合

出力結果の基準となるカラープロファイルの指定を行い、出力時に有効にすることである程度揃えることが可能です。ただし、印刷結果に思わぬ影響が出ないよう、最終的な印刷の仕様や入稿形態に合わせたプロファイル指定を行いましょう。

印刷会社で使用するプリンタ類は、ほとんどが印刷機の刷り上がりに近い色調に調整されています。普段、家庭用やオフィス用のプリンタを使用されている場合は、印刷会社(入稿先)のプリンタ出力を確認して、仕上がりのイメージを把握するのも大切です。

当社で製造する化粧箱や印刷物は、雑誌や新聞と違い完全オーダーメイドのため、特定のカラープロファイルをお願いしておりません。案件ごとに調整を行った簡易校正(プリンタ出力)をお客様にお届けしています。(作業環境 sRGB/Japan Color 2001 Coated)

 

色見本について

色見本の役割

色見本の役割は、お客様との仕上りイメージの共有。

当社では、データ入稿であっても可能な限り「お客様からの色見本(以下、お客様見本)」の送付をお願いしております。なぜなら、色見本は最終的な仕上がりの指標となるからです。お客様と印刷会社の間で色見本を共有するということは、仕上がりイメージを共有すると言えます。

お客様からの色見本は、入稿データを出力する際にも目安として使用し、必要な場合はデータ調整を行うことで簡易校正(以下、最終色見本)を作成しています。また、ご希望の色味がオフセット印刷で再現可能かアドバイスさせていただく場合もあります。また、「赤味を抑えたい」「全体的に明るくしたい」など、入稿後の変更や調整も承っています。

 

色見本の種類 

簡易校正(プリンタ出力)

オフセット印刷は製造コストがかかるため、確認にはプリンタで出力する「簡易校正」を使用しています。使用するプリンタは印刷機に合わせて調整されているため、4Cカラーなど全体的な色味を確認する場合はほとんどが「簡易校正」です。 製造がレーザー式のPODの場合、生産機で出力するため『簡易校正=本機校正』となります。印刷内容が大きな場合は大判のインクジェットプリンタを使用します。

カラーチップまたは印刷物(特色の場合)

特色を使用する場合、インキを調合するためのカラーチップ( DICやPANTONEなど)以外に、印刷物やプリンタ出力を色見本とする場合もあります。 特色印刷の場合『インキ色の見本+内容確認の簡易校正』の組み合わせでご確認いただきます。

本機校正(印刷物)

実際の印刷機や用紙を使った「本機校正」を行う場合は、印刷物を製造時の色見本として使用します。ただし、本機校正を行う場合でも、事前に「簡易校正」でのご確認を行なっていただきます。

また、コスト面から本機校正は以下のような場合におすすめしています。

◎刷り上がりを確認してから製造したい 
◎特色の再現性や色合わせが重要な案件
◎色や濃度違いを比較検討したい 

その他

印刷実績のあるものは、過去の印刷物を色見本とする場合もあります。

 

色見本作成の流れと使い方

4色カラーの場合

お客様見本として、印刷内容や色味が確認できる出力紙をご用意ください『入稿データを当社仕様に調整したデータ』を出力した、「最終色見本(簡易校正)」をお送りします。印刷時に「お客様見本」の色味が再現できるよう、調整を行って出力していますので、印刷内容に加えて色味もご確認ください。

お客様見本(印刷内容や色味が確認できる出力紙)をもとに、当社の仕様で調整データを作成、『簡易校正』出力します。校了後、簡易校正は印刷用色見本として使用します。

特色の場合

お客様見本として、カラーチップや印刷物など色が確認できるものをご用意ください。印刷内容については確認していただくための簡易校正(出力紙)をお送りします。入稿データを当社仕様に調整したデータから出力したものですが、特色の場合は、文字などの印刷内容の確認用とお考えください。

お客様見本(カラーチップや印刷物など色が確認できるもの) は、印刷工程で『調色用の見本』として使用します。

 

制作と入稿

より良い印刷のために

この記事でご説明した通り、オフセット印刷、オンデマンド印刷、プリンタ出力など、印刷には様々な方式があります。当社では、お客様のご希望に添えるよう「最終色見本」の刷り上がりを想定して、製版時や刷り出し後にも必要に応じて調整を行っております。

下記は、実際のデータ調整の一例です。

◎人物の顔まわりなど、ピンポイントで明るさを調整。
◎シャドー部分が強く出過ぎないようコントラストを調整。
◎特定の色のみ濃度調整を行い、色調を整える。
◎印刷時を想定してあらかじめ明暗や濃度を調整。

他にも、ご要望に合わせた調整を行なっておりますので、気になる点は何でもご相談ください。

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